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レポート

植物工場野菜認証システムスタート!
AFCフォーラム 2012年4月号 多論百出

今、植物工場野菜はTPAC-PPS※植物工場野菜の第三者評価・認証システムという、新しい物語を紡ぎ始めます。

■環境と経済の最適解は安全な食にあり

 当法人は、2002年の設立以来、環境問題に注力し「環境と経済はwin-winの関係になり得る。そしてその最適解は、安全な食物にあるのではないか。」と考えてきました。つまり、土壌・大気・水汚染といった環境問題への真摯な取り組みが、安全・安心な食物の提供につながれば、人・環境・経済のトリプル・ウィンにも資するわけです。
 その実現手段の一つとして、植物工場に着目しています。

■植物工場の実力

 牧歌的な農村風景に郷愁を禁じえないものでありますが、農業はいつも災害、異常気象、病・虫害など多くの災厄に見舞われ、そのうえ、先の震災による放射能汚染の心配も加わってリスクは大変なものがあります。
 屋内で環境をコントロールする植物工場は、それらのリスクを回避し、安全で農薬フリーの極めて良質な野菜を作ることができます。また、栄養価や機能性を高めることもできますし、周年生産による安定供給も可能です。その他、灌水した水の97%を回収し再利用する水の生産性、土地面積あたり数十倍の栽培も可能、大消費地である都市工場であればフード・マイレージの短縮等数々のメリットを持っています。

■生産者と消費者の思い

 意欲的な研究者や生産者から、この植物工場野菜の安全・安心や他の栽培方法と比較したメリットについてわかりやすく伝える方法が必要であるという意見が数多く出てきました。
 一方で、消費者は植物工場野菜をどう見ているのでしょうか?
 「植物工場」ときくと、「野菜ではなく工業生産物みたい」「何が使われているかわからない」など不信とまではいかなくても不安の声をよく耳にします。

■TPAC-PPSによる評価・認証

 この消費者の不安を払拭し、正確な情報をより広く伝えるために斯界の権威を迎えたTPAC-PPS植物工場野菜認証システムが、誕生しました。
 このシステムの由来は、2005年より開始されたLand-Eco土壌第三者評価委員会にあります。透明性・公平性・独立性が担保されたこの仕組みは、高く評価され地裁の係争案件の証拠資料になるなど30件を超える実績があります。
 この枠組みを植物工場野菜にあてはめ、第三者評価委員会が、野菜の安全・安心を大腸菌や一般生菌等により、メリットを糖度やビタミン等の栄養分析により、そして養液の安全は、農薬、重金属、硝酸イオンセット等により評価します。加えて工場の再現性(いつも同等の品質を維持できるシステムかどうか)についても植物工場関連文書及びマニュアルのレビューと現場調査のうえ、評価し認証します。

■ゴールド認証での差別化

 認証には3段階ありますが、ゴールド認証を受けた場合は、個々の野菜のパッケージにTPACマークをつけることができます。TPACマークは消費者に一目でその野菜の安全・安心を伝え、マークの横のQRコードを読み取れば、生産者、栄養成分や機能性成分などの情報を即座に知ることができます。つまり生産者は、直接消費者にその野菜の価値をわかりやすく告知でき、他の野菜との差別化を明確にできるのです。

■植物工場の今後

 植物工場は、省エネルギーの断熱構造体、LED、センサー制御、ロボットシステムそして農業そのものもサイエンス農業への進化等様々な研究の成果によりローコスト、ローエネルギーの循環型農業を可能にさせ、代替農業や付加価値農業へと進化する段階を迎えています。
 TPAC-PPSを、植物工場野菜認証のデファクト・スタンダードとして育て、TPAC-PPSによって客観性が付与された植物工場野菜と生産システムは、消費者に愛顧されるとともに、日本の競争力ある輸出品としても成長していくものと確信します。

(注)本稿で植物工場は、基本的に閉鎖型人工光型植物工場を指します。
※生産物および生産システム第三者評価委員会(Third Party Accreditation Committee on Products and Product System)略称TPAC-PPS(主宰NPO法人E-Being)